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鹿からどうやって作物を守るのか

武石はすべて山の中である。あるところは鹿に食べられ、あるところは猪に踏みにじられ・・・なんて本当に冗談では済まない被害が出ているのだ。
最近ではニュースなどでも鳥獣害の問題が取り上げられるようになって、みんなの関心も集めているようだ。だけど実際に苗や作物を食べられた、踏みつけられたなどの被害に遭ってみると、その精神的苦痛は本当に耐え難いものがある。
写真は、エイヤー!と叫びながら向かってくる獣に立ち向かうための竹槍ではない。柵に利用する竹である。
実はもうこの辺では、竹のような自然素材を使った柵では
防げず、電気柵や鉄パイプなどで頑丈に柵を張らなければ
鹿や猪などの猛進には太刀打ちできないという状況である。

どぶろく

密造の定義は、法に背いてこっそりと作ること。
写真は塩糀で塩と糀と水を混ぜた物。糀にはプロテアーゼとアミラーゼという2つの酵素がある。ご飯を口の中でもぐもぐと噛んでいると少し甘味が感じられますよね、これは唾液の中のアミラーゼがご飯のデンプンを糖に変えるからなんです。これを「糖化」って言います。
この糖化を利用してもう少し複数の酵素が絡み合ってできるのが酒です。
以前、糀を届に行った先の農家で「安部さんちょっと見てくれや」と言われ、小さな甕の中のどぶろくを見せてもらったことがある。当然ながら上がり込んでどぶろく談議に花が咲き一杯二杯とご馳走になった事があった。
美味いどぶろくを造るには、経験による技術も必要で全く持ってこれは大切な文化だなあと感じる。「おじいさんが生きてた頃はよく飲んだものだよ」、なんて声を聞くと少し寂しい気持ちになる。作り手も減ってきているし、なによりコンビニで簡単に安価な酒が手に入る時代だ。
日本では酒税法で禁じられていて密造酒になるけど、以前行ったタイ東北部のモン族の村では村人みんなで蒸留酒を作っていたし、諸外国では大事な継承されるべき文化として考えられている所もある。

糀箱

どんな仕事でもそこで使われる道具というのは沢山の知恵が結集していて面白い。醸造の道具も色々あるが、製糀で必要なのが糀箱。最近は省力化とハイテク化で糀箱を使わない製麹が主流だが、まだまだ中小の蔵元などでは糀箱を使っている所もある。麹蓋(糀箱)の材質は良く枯らした杉を使う。様々なこだわりがあるのだろうけど、軽くて清潔でヤニ臭がしないとなるとおのずと限られてくる。
糀箱で製麹するのは結構大変で、夜中に100枚以上の箱を温度管理のために入れ替え差し替えするのは重労働である。
もちろん機械化することで省力化され酵素力価の強い、目的に合った糀ができるのも醸造科学の発展の恩恵だろう。
ただ、味噌汁をジュルッとすすった時に僅かでも作り手に思いを馳せることができるのは結構大切かなとも思う。

供出を逃れた大釜

武石で味噌屋をやりたい、ただそんな思いだけで武石に来てみたものの醸造機械を手に入れるお金も無ければつても無く、ただ無為に時ばかりが過ぎ焦りが出始めていた頃、上田市で味噌屋を今年度限りで廃業するという話しを聞いた。これはもしかしたら醸造器具を譲ってもらえるかも、と調子のよい事を考えながら、私は熱意だけを味噌屋の社長さんに訴えた。もちろん快諾して頂いたのだが、味噌屋という職業はその地で代々継がれてきたことが多く、やはりこの味噌屋も創業から100年近く経っている。
この写真の大釜も大変な歴史を背負っている。運搬のためユニックで大釜を吊り上げた時に社長さんが、「この釜は戦中どうしても供出しなければならなかったんだけど、味噌屋からこの釜が無くなったら大変だという事で、供出を勘弁してもらったんだ」、と言いながらその横顔は晴れやかだったが寂しげでもあったのを思い出す。供出を逃れるためにどうしたのか詳しい話しは聞けなかったが、戦時中、鉄資源のルートを断たれ枯渇し、戦争遂行のために国民から命や資源を奪い取っていった背景にこんな物語があったなんて知らなかった。そしてなによりも味噌屋としての歴史を断ち廃業に至った苦渋の決断を考えると複雑な思いになったのを今でも思い出す。
そんな歴史やそれに伴う思いがたっぷり詰まった重い重い大釜(本当に重い)。私一人の工房では使いこなせず、(工房では一回り小さい釜を使っている)大事にしまってある。先日行われた味噌仕込み会で使ってみたのだが、釜に合う竃が無くブロックを積んだ物だがなんとかなった。
大切に使っていきたい大事な大釜である。

みんなの糀室

この辺では集落の片隅に、一見すると小さな物置のような建物ををよく見かける。もう半分崩れてしまっている物や草に覆われてしまっていて、地域の人からもほとんど気にも止められずにひっそりと建っている物などなど。なんだか社会的に必要性を感じられていないようで可哀想なのである。実はこれ、知っている方も多いとは思うが、集落のみんなで使っていた(使用されているものもある)糀室である。地域内自給にものすごく貢献したであろう、みんなの糀室だ。色々な場所で見かけるが、それぞれに使い易く又よい糀を作るための工夫がなされていて面白い。なんでも無いような所に文化の香りがぷんぷんする。

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